とりあえず刺してみるこぎん

◆とりあえず刺してみるこぎん
 
先日Instagramでちょっとしたお誘いをしました。「こぎん刺しの伝統模様の特性を生かして模様展開していく、大きめの作品づくりに興味ありませんか?」そんな内容でした。2024年秋以降、いよいよアメリカでのさとの坊の活動も本腰を入れていこう、ということで、閃いたままに言葉にしました。本当に思いついたところでまだ何も考えていませんので、これから考えていきます。

(左下は伝統的なこぎん、他はとりあえず刺したこぎんです)

◆とりあえず刺してみるこぎん?
 私がとりあえず刺してみるこぎんを始めたのは、2020年、次男が誕生した直後です。その前年に初めて古作こぎん(江戸時代から明治中期制作のこぎん)の東こぎん(岩木川を境に弘前城東側の地域で作られたこぎん)を制作し、これまでモドコ単位でしか制作してこなかった私は衝撃を受け、こぎん刺しってこうやって模様展開していくのか!と、一気にこぎん刺しへの興味が深まりました。そして、伝統的な模様の基礎模様(モドコ)さえわかれば図案はなくてもいいのかも、と思うようになりました。基礎模様は各図案集やkoginbankさんのモドコDBで確認可能です。
 とりあえず布と針を持って、糸を通していくこぎん、図案すら用意しないラフなこぎん、それをとりあえず刺してみるこぎんと呼ぶようになりました。(私なりにこぎん刺しについてまとめたページはこちらです。)

(東こぎんの模倣作品)

◆図案を用意しないこぎん刺しの楽しみ
 私はこぎん刺しを始めた頃、図案集やキットの図案の通りに間違いなく刺すことが大切だと思って楽しんできました。実際、図案の通りに刺してきたからこそ、その中でたくさんの学びがあり、様々な模様の美しさ、そして模様の機能に出会うことができました。模倣からは本当にたくさんのことを学ぶことができると思っていますし、伝統的な模様は尊重することが大切だと考えています。
 その視点を持ちつつも、自分自身が間違いから生まれる模様に出会ったり、koginbankさんに古作こぎんの中には辻褄を合わせたような模様がいくつもあることを教えていただいた時に、もっとリラックスしていいのかも、と思うようになりました。加えて、存在する伝統的な模様も、間違いなどから生まれているのでは?と思う機会もたくさんありました。
 図案がない=間違いがない何が生まれるか分からなくてワクワクすると考えるだけで、どんどん刺したくなっていきました。間違うのも辻褄を合わせるのも、やってみると生き物が生き物をこしらえている感じでとても面白いのです。そして、整っていないと言いつつ整うというか、離れてみるとカッコがつく、人間らしさがそこにある感じがするのです。
 どんなに立派に見えるこぎん刺しも、解いていくとモドコに辿り着き、モドコも解体すると一定の長さの線だと思っています。もちろん伝統模様が存在することを有難く思い、伝統模様を敬う気持ちがありますが、種から植物を育てるように、順序立てて進んでいけば自然と模様は広がっていくと思っています。
 この経験を自分自身これから増やし、言語化し、興味ある方と一緒に楽しめたらと考えています。

 初めは隙間時間で小さな布切れに刺して楽しんでいました。それを少しずつ大きくしていき、無事に布が糸で埋まるたびに伝統模様への信頼が高まるとともに、伝統模様の凄さを知っていきました。そして昨年、こぎん刺しの伝統模様を、模様の声を聞きながら繋げるだけで畳一枚分のこぎんが出来上がることを経験しました。そこから、ますます伝統模様を知りたいという気持ちが強まっていきました。今の私の技量だと、とりあえず刺してハッとするような整然としたこぎんには辿り着けないのですが、伝統模様に導かれた先にある作品ですので、これはこれで魅力的だと思っています。
 完成した時に初めてデザインに出会える、決められたゴールがないこぎん刺し、この楽しさ、ぜひとも一緒に楽しんでくださる方がいらっしゃれば、嬉しいです。

 さとの坊のこぎんキットも、すべてとりあえず刺してみたこぎんです。一時帰国の際、キット販売を行えたらと考えていますので、機会があればぜひご利用ください。少しくらい図案と違っても、気にせず楽しんでいただけたらと思います。

 

 

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Satonobou